住宅
2021/05/05

Conserve House Story2⃣『誕生ものがたり』~まちに暮らす~

このブログを書いた人
茅野直樹(営業推進部)

見慣れた街の表情

見慣れた街の景色も、目的を持って歩いてみるといろいろと違った様子が見えてくる。
建てられる土地はどこにあるのか。
昔ながらの長屋、入り口の狭い道の先にある奥行きが長い町屋、
何軒もつながった長屋が取り壊された跡にできた駐車場。
エリアが変われば、きれいに区画が整理された新興住宅地や、高低差のある土地に建つ住宅から、
生垣が手入れされ秩序をもって並んでいる住宅地まで様々だ。

住まいとは何だろう?とあらためて考える。

地域柄や歴史の背景の上に成り立っている要素がきっとある。
例えば、新潟島(新潟市中央区)で言えば『堀と通りと小路』の関係だ。
堀と通りに対して直行する道を小路と呼んでいる。
柾谷小路、新津屋小路や鍛冶小路などがある。
歴史と成り立ちを見ていくと、新たな発見ばかりで日々の街歩きが日課になりそうだ。 

どこに住むか、どこに住もうか、今は土地を探す。

新潟島の中で小路を歩くと古くからの長屋がまだ残っている。長屋は集合住宅の1つである。
複数の住居が1つの建物の中で壁を共有している建物で、テラスハウスやタウンハウスとも言われている。

堀や通りを歩いていると、道路に面する巾は少ないものの奥行きが長い建物を見かけることがある、町屋である。
江戸時代では道に面する間口(巾)によって税金が決められていた。
町屋といえば、京都や金沢の町並みを思い浮かべる。
京都の町屋、京町屋の特徴はまさに『うなぎの寝床』の住居だ。

間口が狭く、奥行きが長くとても深くつくられている。
職住一体のためにつくられた住宅で、直射日光が入るところは限られているが風通しを工夫された住まいでもある。
スペースを有効活用するために「通り庭」と呼ばれる土間空間や階段の一段一段が抽斗収納になっている「箱階段」がある。
「坪庭」と言われる中庭があり、木が植えることが多く、そこから光を取り込むことはもちろん、季節を感じさせるための装置であり、陰影を表現でするための空間だったのである。

街中、都市の真ん中に暮らしていても、先人の住まいにならい、土間空間や緑とのつき合い方、中庭的場所を組み込むことで、それがたとえコンパクトな要素があったとしても、新潟の馴染む、新潟の住まいが提案できるのではないだろうか。
新潟を楽しめる、居心地が良い住まいができると思う。

そうだ、次は京都へ行こう。

学生時代に、京都に住んでいた設計スタッフとともに車を走らせる。
受け継がれてきた歴史と根付く文化に触れ、新しい気づき、提案のきっかけ、アイデアのヒントと実際に想うとワクワクが止まらない。
京都の街を歩きまわる。

次に、京町屋に新たな使いみちを見出し、暮らしを体感できる空間へつくり上げたところへ向かう。

伝統的な京町屋を体感できる空間へ。

そこは、京都市中京区にある『京の温所』。(きょうのおんどころ)

一棟貸し切りの宿泊施設で、時間の移ろいの中で、光の加減など京町屋を目一杯体感できる。
8つある京町屋の中で、築150年の『釜座二条』へ。(かまんざにじょう)
建築家の中村好文さんとミナペルホネンの皆川明さんの手によって、新たな住まいへと生まれ変わっている。
(株式会社ワコールがプロデュース)

中庭には灯篭、樹齢100年ほどのイヌマキの木が植えられている。
庭の一角には、旅やデザインにテーマをしぼられた蔵書の約200冊のライブラリースペースが離れとして用意されている。
ミナペルホネンの生地の張られた特製のベンチに腰をかけ、庭に向かいながら読書をすることができる。

築150年を活かし、京町屋を未来に残すために新たな価値の創造を感じる。

間口はおそらく2間と少し(4mくらい)、奥行きは8間(15mくらい)。

窮屈さはなく、あちこちにゆとりを感じる。
緑の豊かな中庭とそこに対しての余白。
視線を向かわせるための工夫、窓際の光の移ろいや日差しのやわらかさ。
苔につく朝露、灯篭の灯り、くつぬぎ石のくぼみなど、庭にリズム感がある。
道路に面した木の格子窓から入る、駆ける抜ける風。
町屋の特徴として室内の動線は、長い距離を直線的に移動することになる。
一歩一歩進むと部屋の意味を変え、場面も一枚一枚変わっていくように感じる。
連続してシーンが変化することで、空間の印象が劇的に変わることが町屋の在り方かもしれない。
中庭から入る、わずか一瞬の光だけでも幸せと期待感を感じさせてくれる。
その場の一時一時を最大限活かし、時間による変化・表情を見極めることが住まいには重要な要素だと思う。

住まい方にはさまざまある。

どうして、まちに暮らすのか。
都市に暮らす面白さや快適さ、変わる代わる現れるシーン。
いろんな方向から見える中庭、
時間の感覚が読み取れる仕上げ、
まちで暮らすことで感じられるエッセンスが詰まった住まいを提案することができるのではないか。

新潟市中央区、新潟島の中で計画をスタートさせよう。

 

第三話 色を楽しむ

このブログを書いた人
茅野直樹(営業推進部)

大学生時代、イタリアの家具見本市ミラノサローネに行ったのがきっかけで、家具との暮らし、空間表現の楽しさを知り、建築を志すように。インテリア学校卒業後、東京の設計事務所、ハウスメーカー従事後、新潟に戻り、現在に至る。

ワクワク夢が描けて気分が盛り上がる本:渋沢栄一著 論語と算盤 ・ モーリスセンダック著 かいじゅうたちのいるところ。

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